三田村光土里・個展
「ふたつの部屋のストーリー」
“stories in two rooms”




■部屋・その1  →ナディッフ会場にて

「ニュー・シベリア・カフェ」

ようこそニュー・シベリア・カフェへ。
ここは、北へ向かう恋人達が集まる秘密のカフェです。

支配人

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「ニュー・シベリア・カフェ」という名の秘密のカフェが、インターネット上のどこかにひそんでいる。
これは、人の道に背く恋に落ちた一組の恋人達が、普段は面と向かって口に出せないお互いの思いを第三者になりすまして語り合うために存在する。
この形を持たないインターネット上の「ニュー・シベリア・カフェ」が3次元のギャラリースペースに置き換えられ、現実と非現実の狭間をさ迷う小さな部屋が姿を表わす。
 そこには、北へ向かう恋路を歩く男と女の、絡み合う感情のオーラが空虚に怪しく漂う。

 このカフェがインターネット上にオープンして約一年。ふたりの言葉の記録をハードカバーの本に収めた。
この本は、誰も手を触れて中を見ることができない。 が、どうしても読みたい人のために、鍵付きのボックスに入った本を10冊だけ用意した。
ただし、鍵が渡されるのは25年後。その後恋人達がどのような恋の結末を迎えたのか、近況を添えて鍵をお渡しする。永い永いこの恋の行方を、時の流れに身を委ねて見守ってほしい。

 この秘密のカフェがどこにあるのか、それは誰にも教えられないが、同じ境遇の恋人達のたに、第2の「ニュー・シベリア・カフェ」をネット上に開設。
北へ向かう恋を自由に語りあえる場所を提供する。 
http://www.newsiberiacafe.com




■部屋・その2 →現代美術製作所会場にて

家族の記憶は平凡で幸せであるほど何故か切ない。家族の蔵書と、平凡で垢抜けない装飾品で覆い尽くされた入り口の無い部屋の中に、白昼夢のような現実が姿を見せる。

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「冬の風の強い日の丘の上、午後2時」    

 ここにあるのは、手の届かない現実と、手の届く虚像。
現実のような夢。夢のような現実。消えゆく記憶はどちらに属するのだろう。
午後2時くらいの冬の日差しはいつも、わたしを一瞬、説明のつかない亡却の世界へ連れて行く。 心に憶えるのは、ただただ、せつない気持ち。そんな気持ちから浮かび上がるイメージを形にして繋げてみる。
すると、賢明に大真面目に生きてきたはずの、うちの家族の人生も、表面に見えるものは意外にも滑稽さだ。人生って案外そんなものなのかも知れない。
それぞれの人生のどんな過去も現実も、親しみをこめてクスッと笑ってしまおう。
辛い事には頭を抱えて、「あーあ、もう、しょうがねーな」って具合に。
何時もどんな場所にも、午後の日差しはたんたんと降り注いでいる。      

                                   三田村光土里




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